教授挨拶

大分大学医学部耳鼻咽喉科学講座は昭和56年4月1日、初代教授・茂木五郎、助教授・前田昇一、講師・梅原豊治の3名で開講され(当時は大分医科大学)、平成11年3月より2代目教授・鈴木正志に、令和6年10月から3代目教授・平野隆となり現在に至っています。当講座開設以来、研究の過程で問題点を把握し解決方法を見いだしていく姿勢を身につけるため、臨床と基礎研究の両立を目指しています。

新患外来は平成26年4月からは完全紹介予約制となっています。一般再来は主治医制でなく、手術・外勤のない教室員全員で分担しています。診療に苦慮する症例は毎週のカンファレンスで診療方針を検討する体制となっています。病棟は手術を中心に運営され、月・火・木・金曜日の午前・午後、水曜日の午前に定時手術、その他、緊急手術が不定期に行われています。疾患としては頭頸部癌の症例が多く、いろいろな頭頸部癌治療に積極的に取り組んでいます。通常の外切開による腫瘍切除と再建手術に加え、内視鏡下咽喉頭手術や経口的咽喉頭部分切除術、現在では、頭頸部癌に対しての光免疫療法(アルミノックス治療)を開始しています。またダビンチによるロボット手術の導入をしており、今後、治療を開始したいと考えております。地方の大学病院として耳鼻咽喉科領域の疾患全般にわたり対応しており、耳科手術では人工内耳手術はもとより、経外耳道的内視鏡下耳科手術による低侵襲手術を行っています。鼻科手術では内視鏡下鼻副鼻腔手術を主体に行なっており、良性腫瘍から悪性腫瘍の摘出まで行っています。また、頭蓋底腫瘍に対しても頭蓋底手術を脳神経外科との共同手術で開頭することなく内視鏡下に腫瘍摘出を行っています。

教室の研究テーマは鼻・中耳を含む上気道粘膜における免疫機構の解明で組織学的,免疫学的,分子生物学的手法を用いた研究を行っています。
また、教育・人材育成も大学の重要な使命です。卒前教育では系統講義、頭頸部OSCE、臨床実習があります。臨床実習では学生ひとりひとりに担当医が1名つきマン・ツー・マンで指導を行う形式をとっています。卒後教育では日本耳鼻咽喉科学会専門医の資格を目標に、当院ならびに連携施設において大分大学医学部附属病院耳鼻咽喉科専門研修プログラムに従い4年間の研修を行っています。また、日本気管食道科学会、日本アレルギー学会、頭頸部外科学会のsubspecialityとしての専門医の資格も取得可能です。先に述べたように当科では耳鼻咽喉科領域全般の疾患の研修が可能であり、新専門医制度のもとでも耳鼻咽喉科専門医試験を受験した全員が専門医の資格を取得しています。

最後に全国的に見ると大分県内の耳鼻咽喉科医の数は少ないものの、県下に手術を行う連携病院である大分県立病院、別府医療センター、南海医療センター、国東市民病院にも常勤医を派遣し、耳鼻咽喉科領域において大分県における地域医療を担っています。充実した研修、教育、研究により、有能かつ活力のある耳鼻咽喉科専門医、さらにアレルギー専門医、気管食道専門医、頭頸部がん専門医を育成し、地域医療はもとより国内外の耳鼻咽喉科医療・医学に貢献したいと考えております。

大分大学医学部 耳鼻咽喉科学講座 教授 平野隆